六文銭~三途の川の渡し賃~
故人様の棺にお納めする副葬品のひとつに、六文銭があります。
六文銭とは、名前の通り一文銭が六枚揃ったものを指します。かつては実際のお金が使われていましたが、火葬が普及した現在では、燃えやすい紙や木などの素材で作られた模造品を代用しています。
なぜ、棺に金銭を入れるのでしょうか。
仏教の世界では、亡くなられた方の魂は現世から三途の川を渡った後に、死後の世界へと旅立っていきます。
その三途の川のほとりには、懸衣翁(けんえおう)と奪衣婆(だつえば)という鬼の夫婦が住んでおり、川を渡ろうとする者の衣服を剥ぎ取りその衣服の重さを量って罪の種類を決めるのだそうです。
審議の結果、故人様は何らかの罪に応じた苦行を科せられ、とても辛い思いをしながら川を渡る事になります。
しかし六文銭を渡せばこの苦しみを味わう事なく、安全に川を渡る事が出来ると言われています。六文銭は現代の金額に換算すると約300円となるので、川の渡し賃として相応しい価値があるのです。
六文銭と聞くと、真田一族の家紋を思い浮かべる方もいらっしゃると思います。これも上記の由来に関係しており、戦で命を散らしても安心してあの世に逝けるという武士らしい考えが表れていると言えます。
六文銭は云わば死者のお守りとして、古くから大切に取り扱われてきた存在なのです。